1972年の冬
このセカンド・アルバムの日本盤解説書いてる
長門芳郎さんの荻窪のアパートで
ボビー・チャールズのファースト・アルバム(1972年)を
聞かせてもらった。
早速輸入盤を仙台に買って帰り
ピーターパンで流したときの
お客さまの感激の表情が今も忘れられない。
***
1974年に録音されながら
何故かお蔵入りしたベアーズビルからの
セカンドアルバムが遂に出た。
たった一週間しか録音時間が
取れなかったせいだろうか、
ボビー・チャールズの歌と演奏がシックリ来ない。
「なんたって曲がいいんだ」と
語られてきたファースト・アルバム。
確かにそうなのだが、
実はその本当の素晴らしさは
南部人ボビー・チャールズの
「ゆったりした時間感覚」を
アルバムに封じ込めることが出来たからなんだと思う。
皮肉にもこのセカンド・アルバムがその証明をしてくれた。
とはいうものの
このボビー・チャールズの黄金の声の魔力は
セカンド・アルバムの様々な欠点を
いとも簡単に消し去っていまうのだった。
BOBBY CHARLES/BETTER DAYS (CD)
BEARSVILLE VICTOR : VICP 75033 (JP 2011)
ロックの世界で
ランディー・ニューマンは
レイ・デイヴィス(キンクス)と並ぶ
名ストーリーテラー。
どちらもそのストーリーテリングのベースにあるのは
一種あきらめにも似た
「自分自身をも含め、人間って、つくづく・・・」。
***
ランディー・ニューマンの英国での特番ライブ(2008年)が
CD+DVD の形で発売された。
18世紀の元教会でBBCオーケストラをバックに
ランディーは選りすぐりの22曲を披露する。
普遍的な愛の歌(MARRIE,I MISS YOU)
時事ネタ(A FEW WORDS IN DEFENSE OF OUR COUNTRY)
宗教もの(GOD'S SONG)
エロもの(YOU CAN LEAVE YOUR HAT ON)等々。
最初は硬かった客席も
曲と曲の間に次々飛び出す
アメリカン・ジューイッシュ・ジョークに
笑いの渦・・・とはいっても私には当然
何をしゃべてるのかまったくわからず。
ワーナーさん
日本盤は語りの和訳付で!
***
最近「日本にまた行ってみたい」という
ランディーのインタビュー記事を読んだ。
万が一(言葉通りです)
29年ぶりの来日公演が実現するとしたら
2度のアカデミー受賞者にふさわしく
(モンスターズ・インク&トイ・ストーリー)
N饗バックの豪華なのでお願いね。
RANDY NEWMAN/LIVE IN DONDON (CD+DVD)
NONESUCH : 7559-79790-1(US 2011)
アルバム一枚そっくり「雪」がテーマ。
一曲目は「スノーフレーク(一片の雪)」。
人間なら誰でも、いつか、どこかで
「一片の雪」が落ちてくるサマを
何時間も追い続けた記憶があるはず。
ほとんどの人はその幼少期だったろうけれど、
ケイト・ブッシュは50歳を超えた今も
「一片の雪」を追い続けていられる人。
皮肉ではなく
その贅沢な心の道楽に感動してしまった。
***
「エアリアル」以前のサウンドは
テクノロジーの匂いの強いゴシック・ロック、
今は「フリル付の音楽はもう止めたのよ」って感じだ。
イントロがあってサビがあってという曲作りも止めてしまった。
メロディ・モチーフ(またはフレーズ)が延々と続いていくだけ。
だから最初は「何このバラケ具合」と感じるかもしれない。
でも10回繰り返し聞いたあたりから
「何このバラケ具合」は
見事に織り込まれたペルシャ絨毯のごとき艶姿を見せる。
KATE BUSH/50 WORDS FOR SNOW (CD)
FISH PEOPLE : TOCP 71202 (JP 2011)
ソウルの名曲を山のように書いてきたドニー・フリッツ、
彼とザ・デコイズの仙台公演(2009年9月27日)が
大盛況のうちに終わりサインをもらいに
ファンが真っ先に向かったのは
なんとベースのデヴィッド・フッドだった。
デヴィッド・フッドが演奏に参加した
膨大な数のヒット曲を知っているファンが
たくさん見に来てたってことだ。
「男が女を愛するとき BY PERCY SLEDGE」
「貴方だけを愛して BY ARETHA FRANKLIN」
「ダンス天国 BY WISON PICKETT」
「ローン・ミー・ア・ダイン BY BOZ SCAGGS」
ひとつひとつ挙げていったら
20世紀後半の名曲集ができてしまう。
言うまでもなく
デヴィッド・フッドのキャリアは
リック・ホールをプロデューサーとする
フェイム・レコード(アラバマ州)のスタジオ付ハウスバンド
後のマッスル・ショールズ・リズム・セクションの
一員として始まった。
***
イギリスから出た。
1961年から1973年までの
R&Bがソウルになりディスコへ変わろうとする時期
まさにR&B/ソウル黄金期の名曲・名演オンパレード。
写真満載の82ページのブックレットには
レコーディング秘話がいっぱい。
ジニー・グリーンはデモトラック専門の歌手で
リック・ホールは彼女を決して一人前の歌手として認めなかったとか、
クラーレンス・カーターの大ヒット曲「PATCHES」は元々
チェアマン・オブ・・ザ・ボードが歌う予定だったとか・・。
全75曲通して聴いて気づくのは
フェイム・レコードのスタジオ付ハウスバンド
(時代によって3つに分けられる
マッスル・ショールズ・リズム・セクションは2期)の演奏は
スタックスやモータウンに比べれば
驚くほど柔らかく(メロー)
かつ奥ゆかしい(モデスト)ってこと。
結果
出しゃばり過ぎることなく
ロック~ソウル~カントリー
様々なタイプのアーティストの音楽に
寄り添っていけたんだと思う。
1960年代後半から1980年代まで
世界の一流ミュージシャン(ローリング・ストーンズ含)が
アラバマを目指した理由がなんとなく分かった。
PS:
アラバマ州がアメリカ国内でどれくらい田舎かと言うと
ニューヨークあたりから見れば
十分田舎のはずのテキサス州(アラバマの隣の州)で
「アラバマ行ってみたい」って話したら
「あんな田舎に何しにいくの?」って言われちゃった。
THE FAME STUDIOS STORY 1961/1973 HOME OF THE MUSCLE SHOALS SOUND (3 CD SET)
KENT : KENTBOX 12 (UK 2011)
海外からやってくるお客さんに
「日本でいま一番のお薦めバンド教えて?」と
聞かれて迷わず
「それは、ゆらゆら帝国ね」と答えてきた。
100%現代日本そのもので
ワールドワイドな視点を持ったバンドだったから。
解散してしまった
ゆらゆら帝国のリーダー
坂本慎太郎のソロアルバムが届いた。
コーネリアス等との交流のせいだろうか、
ロックン・ソウル仕立てになってる。
ゆらゆら帝国時代と同様
ありふれた単語の組み合わせで
エロチックな妄想を呼び起こす
「ずぼんとぼう」M-5 を始め、
世界に似たものが無い
オリジナルな作品が10個
チョコンとクールに並んでいる。
ゆらゆら帝国の華麗さは消えたけれど
ちょっとデッドな乗りのこのソロアルバムも好き。
坂本慎太郎/幻とのつきあい方 (2 CD SET LIMITED EDITION)
ZELONO RECORDS : ZEL 002S (JP 2011)
ジノ・パオリの歌は
「音楽に酔う」という
久しく忘れていた感覚を
呼び戻してくれます。
イタリアから最新作「STORIE」(2009年)が届きました。
新作は期待通り
ジノ・パオリ一流のエレガンスで統一され
サラリとした聞き心地を残す
ほんとうに素晴らしいものです。
"Un Altro Amore サンレモ音楽祭3位入賞曲" と
"I Viaggiatori" の2大名曲が入った
前作"SE 2002年" はジノ・パオリの最高傑作ゆえ
聞き始める前にちょっと覚悟がいりますが、
この新作なら日に何度もプレイボタンが押せそうです。
これがベルルスコーニより2つ年上の
ジノ・パオリ75歳の作品だというのですから
恐るべしイタリア男!
しかも
歌詞に登場する
「スィニョーレ」
「スィニョリーナ」
「バンビーナ」の回数では
ベルルスコーニの「それ」に負けていません。
LA VITA !!!!!
SONY/GRADE LONTRA : 88697443462 (IT 2009)
ブライアン・ウィルソンは
ヴァンダイクパークスの音楽的才能
そしてその独特の話しぶりが気に入り
「スマイル」の歌詞はこいつに頼もう、
と決心したという。
「スマイル」が頓挫した一年後に発表された
ヴァンダイクパークス「ソング・サイクル1968年」を聞けば
ブライアンの判断が正しかったことは明白。
ソロアーティストであると同時に
ドラッグまみれの名アレンジャーでもあったヴァンダイクパークス、
彼のアレンジ・コンピレーション第一集が出た。
ヴァンダイクパークス自身の貴重なシングル(MGM 時代) をはじめ、
リトル・フィート、ライ・クーダー、
サル・ヴァレンティノ(ボー・ブランメルズ)、
ディノ・マーチン(ディーン・マーチンの息子)、
アーロ・ガースリー、ボニー・レイット等
ワーナー・リプリーズ関係のアーティストがズラリ。
聞き物はマッドな才気が炸裂する
ライ・クーダーとリトル・フィートの仕事だろう、
グラマラス・ハリウッド・サイケ万歳!
サンフランシスコのフォークロア・サイケなんて屁じゃん
といわんばかり。
リトル・フィートといえば
ローウェル・ジョージの娘イナラ・ジョージに対する
異常ともいえるヴァンダイクパークスの肩入れぶり
その真の理由は実は他のところにあるんだけれど
2チャンネルになっちゃうから止めとく。
僕が買ったのはLP盤(180g重量盤)だけど、
マスターリング(カッティング)は期待したほど良くない。
Side A
1. Donovan's Colours - GEORGE WASHINGTON BROWN
2. Come to the Sunshine - VAN DYKE PARKS
3. The Eagle and Me - VAN DYKE PARKS
4. Friends and Lovers - SAL VALENTINO
5. ALLIGATOR MAN - SAL VALENTINO
6. Farther Along - VAN DYKE PARKS
7. Valley to Pray - ARLO GUTHRIE
Side B
1. Out on the Rolling Sea when Jesus Speak to Me - VAN DYKE PARKS
2. Sitting Here in Limbo - DINO MARTIN
3. Wha' She Go Do - BONNIE RAITT
4. Sit Down I Think I Love You - THE MOJO MEN
5. One Meatball - RY COODER
6. Cheek to Cheek - LOWELL GEORGE
7. Spanish Moon - LITTLE FEAT
8. Ice Capades ( Moog Music '67 ) - VAN DYKE PARKS
VAN DYKE PARKS/ARRENGEMENTS VOLUME 1 (LP)
BANANASTAN : B 3300(US 2011)
ヒュー・ローリーってイギリスの俳優知ってる?
TV俳優としては最高レベルのギャラ取る人らしい。
ブルース・フリークだと語るヒューだが
初アルバムは俳優の道楽の域をはるかに超えている。
ちょっと硬いかなと思うところもあるけれど
自分のキャラクターを客観視した結果だろう。
アラン・トゥーサンやアーマ・トーマス
ドクタージョン等ニュー・オーリンズの
リヴィング・レジェンド達がゲスト参加してる。
HUGH LAURIE/LET THEM TALK (CD)
WARNER MUSIC UK : 2564674078 (UK 2011)