サーストン・ムーア(ソニック・ユース)のソロ第3弾です。
アコースティックな楽器(ギター&チェロなどの弦)だけで
構築されたはっきり言ってプログレですね、これ。
ヴォーカルを含め「不用意な音」というものが
このアルバムにはまったくありません。
最初からすべて予定されていたかのように
何もかにもが調和している、そこがプログレ。
それでいて
完璧なのに息苦しくなく、
簡素なのに豊潤だという、
まさに奇跡のようなアルバムです。
THURSTON MOORE/DEMOLISHED THOUGHTS (LP)
MATADOR RECORDS : OLE 953-1 (US 2011)
ギリアン・ウェルチ&デヴィッド・ローリングスの
新作、やっと届きました。
「ハーヴェストBY NEIL YOUNG」の出来損ないみたいだった前作が
よほどこたえたのでしょうか。
この8年間録音する気になれなかったと語る2人です。
2001年の傑作「タイム」に立ち返った印象の新作ですが
「タイム」を覆っていたドープの匂いは少なめです。
何のドラッグも使っていないのに
2人が演奏し始めたとたん
ジャコウの様に強烈なドープを発するんですね。
YOU TUBE 1番目の映像がそれを証明しています。
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YOU TUBE 2番目の映像をごらんになってください。
新作のカバースリーブ、素晴らしいです。
フェルトっぽい厚い紙の上に職人が1枚1枚
版を刷りこんでいく手の込んだものなのです。
これがなんと
家族経営の小さな印刷屋さん(ロサンジェルス)で
作られているんですよ。
この印刷屋さんが泣かせます。
三編みの無愛想な職人とか
古い印刷機械にちょこっと乗った星条旗とか
片隅に何気なく置かれた花とか
インクの匂い立ちこめる整理された工房の具合とか
そんなこまごまとした事柄にぐっときます。
クラフトマンシップ溢れる音楽家と呼ばれることを
良しとするギリアン&デヴィッドの気持ちが
この一風変わったプロモヴィデオ1本に
凝縮されてると思いませんか。
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いまやストーンズからポール・マッカートニーまで
手がける天才マスターリング・エンジニア、
ギリアン・ウェルチの「タイム」の仕事で名を上げたんです。
当時、歌と2本のギターだけで
あんな不思議な音空間を生み出せるのは
スティーヴン・マーカソンしかいませんでした。
もちろん今作もスティーヴンがマスターリングしてます。
GILLIAN WELCH/THE HARROW & THE HARVEST (CD)
ACONY RECORDS : ACNY 1109 (US 2011)
スティーヴ・アールの新作です。
アリソン・ムーアとの充実した結婚生活が
アルバムの隅々からにじみ出てます。
録音卓の前で1歳の息子を抱っこしてるスティーヴの写真が
何よりの証拠でしょう。
プロデュースはT・ボーン・バーネット、
これぞ究極のオルタナ・カントリーって感じに
仕上がったのはバーネットの力でしょうね。
アラン・トゥーサンのブラスアレンジ(一曲だけ)
いい感じです。
アルバムタイトル(そしてスティーヴ・アール作最新小説のタイトル)
" I'LL NEVER GET OUT OF THIS WORLD ALIVE "
「生きてるうちはこの世から抜け出せないだろう」
(ハンク・ウィリアムス作)は
45回転シングル盤としてのみリリースされてます。
これはどんどん消えていく
全米レコード小売店救済キャンペーンの一環として
発売されたもので今ならEBAY で
$20 くらいで手に入ります。
STEVE EARLE/I'LL NEVER GET OUT OF THIS WORLD ALIVE (CD)
NEW WEST RECORDS : NW 6195 (US 2011)
復興の街仙台から登場した
2人組女性ハードコア・ポップバンド
TADZIO タッジオです。
「ヴェニスに死す(ヴィスコンティ)」のタッジオね。
現実の方がよっぽどパンクな2011年日本の夏、
この鬱屈を晴らせるのはこのタッジオしかいません。
銀座(祇園も可)のメタリカ(初期)
これは強い。
ジャケよーく見てください、
スリッツが登場してきたとき
美人過ぎる英国女性3人に世界中の
男性パンクスはドキドキしたものですが
このタッジオもきっと同じような旋風を引き起こしますよ。
現にピーターパンでタッジオを聞いた(ジャケ見た)
「ゼルダ」命の元パンクスが
「明日タワーで買ってくる」と力強く宣言してましたもの。
2011フジロックは「タッジオの夏」になると思います。
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瀬川雄太君(サトル)のエンジニアリング見事です。
仙台が日本のマッスル・ショールズになる日は近い。
P-VINE : PCD 18008 (JP 2011)
1994年の夏、
低空飛行を始めた飛行機から眺めた
ウイスコンシン州(アメリカ最北の州)は
行けども行けども森と湖だった。
ウイスコンシン州の小さな町オー・クレア(EAU CLAIRE)で
ジャスティン・バーノン(ボン・アイヴァーはプロジェクト名)の
傑作ファーストアルバム(2008年)は録音された。
ジャスティン・バーノン本人が認めるとおり
アルバムのベースに流れるのは
「隔絶 ISORATED」と「故郷オー・クレアの町」。
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セカンドアルバムが出た。
オー・クレアの町でマイペースな音楽活動を
続けていくのだろうと思われたジャスティン・バーノン、
が彼を取り巻く環境はこの3年で激変した。
まさかのカニエ・ウエストとの競演!や
イギリスを中心とした人気沸騰
それらはジャスティン・バーノンの音楽に
微妙な変化をもたらしている。
電気処理されたヴォーカルはベールにおおわれ
走馬灯のように現れては消える。
それは俳句の様な歌詞と混ざりあい
限りなくプログレッシブ。
20回繰り返し聞いて
やっとアルバムの輪郭が見え始めたところ。
シンプルにみえてちょっと厄介な
ジャスティン・バーノンのセカンドアルバムだ。
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YOU TUBE のカニエ・ウエストの映像カクカクしてるけど我慢してね。
オタ芸女性軍団の右手の台に乗ってる
白い上下着た新興宗教の教祖みたいなのが
ジャスティン・バーノン。
JAGJAGUWAR : JAG 135 (US 2011)